『キングダム』における最も過激でドラマチックな性愛描写といえば、著雍編から加冠の儀へと至る「太后(趙姫)と嫪毐(ろうあい)」の愛憎劇を外すことはできません。秦国を揺るがす大事件「毐国の乱」の根底にあったのは、後宮に幽閉同然で生きる美しき太后の孤独と、偽りの宦官として送り込まれた嫪毐との生々しい男女の関係でした。
原作漫画では、太后の妖艶な肢体や嫪毐との情事、二人の間に生まれた隠し子を巡る葛藤が非常に濃密なタッチで描かれています。この原作のお色気描写の経緯について、原先生は後宮という閉ざされた狂気の空間と、歴史を動かした女性の業の深さを読者に伝えるため、あえてタブーを恐れずリアルに描き切る手法を選択しました。
単なる肉体関係を超え、最終的には不器用ながらも深い家族愛へと昇華していった二人の絆は、多くの読者に強い衝撃と感動を残しました。過激な描写の裏に潜む重厚な人間ドラマこそが、本作が大人向け漫画として傑作と呼ばれる所以です。