「飛行機は一度トラブルが起きれば助からない」という認識は、映画やセンセーショナルな報道によって刷り込まれた巨大な偏見に過ぎません。米国家運輸安全委員会(NTSB)が過去数十年にわたる全米の航空機事故を網羅的に調査した統計によると、搭乗者が乗っていた事故における飛行機事故の生存率は95.7%を記録しています。重大な機体破損を伴うシビアな事案に限っても、過半数を超える搭乗者が生還しています。
航空事故を科学的に理解する上で欠かせないのが、パイロットや管制官の間で周知されている離着陸時の魔の11分間(クリティカル・イレブン)という概念です。これは、フライトにおいて最も事故が集中する時間帯を指します。
- 離陸後の3分間(Plus 3):エンジン全開の上昇時で、鳥の衝突(バードストライク)やエンジン推力喪失のリスクが高い時間帯。
- 着陸前の8分間(Minus 8):高度を下げ、速度を落としながら地上へアプローチする段階。天候急変や滑走路侵入トラブルが起きやすい時間帯。
民間航空機事故の約7割から8割はこの11分間に集中しています。巡航高度に入って水平飛行を続けている約9割の時間帯は極めて安定しており、致命的なインシデントが発生する確率は劇的に下がります。離着陸時の11分間だけは靴を履き、シートベルトを骨盤の低い位置で固く締め、非常口の位置を目視で確認しておく。このシンプルな行動だけで、生存率は跳ね上がります。