「サラダ記念日」というタイトルから、多くの読者は「工夫を凝らした特製サラダを作って褒められた情景」を思い浮かべがちです。しかし、歌壇や文壇で長年語り継がれ、本人の手記やインタビューでも明かされているサラダ記念日の誕生秘話には、思わず膝を打つ意外な事実が隠されています。
実体験において、当時のボーイフレンドに「おいしい」と喜ばれた実際の料理は、サラダではなくサラダ記念日の鶏の唐揚げでした。著者が当時、少し工夫を凝らして作った「カレー風味の鶏の唐揚げ」を振る舞ったところ、相手が「お、これうまいね」と褒めてくれた実話がこの短歌の原点です。
それならば、なぜ「唐揚げ記念日」にしなかったのでしょうか。俵万智自身が当時の回想録などで語った理由は明快です。「唐揚げ記念日」では語感が重く、どこか脂っこい印象を与えてしまうのに対し、「サラダ」という言葉を用いれば、初夏の爽やかさや青々とした野菜の瑞々しさ、そして何より軽やかなポップさを表現できます。日常の事実に縛られすぎず、詩としての響きと情感を最優先に推敲を重ねたからこそ、時代を越えて愛される普遍的なフレーズへと昇華されたのです。