スマートフォンやテレビで手軽に映像を楽しめるNetflixをはじめとした動画配信サービスが広く普及した現在、映画興行産業は大きな変革の時代を迎えている。自宅のソファでボタン一つで映画が観られる環境がありながら、なぜ私たちは依然として劇場へ足を運ぶのだろうか。
その答えは、暗闇の中で見知らぬ観客たちと圧倒的な映像と音響を共有する「空間体験」そのものにある。名匠・宮崎駿監督が手掛けた『君たちはどう生きるか』のような緻密な細部まで描き込まれたアニメーション映画や、新海誠監督作品が見せる繊細な光と色彩のニュアンスは、劇場の巨大スクリーンと極上の音響環境があって初めてその真価を発揮する。
さらに、クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』に代表されるような、物理的なフィルムや超高精細カメラで撮影された重厚な映像作品は、IMAXの巨大画面で観てこそ製作者の意図した本当の衝撃が伝わる。家庭用モニターでは決して再現できない空気の振動や暗闇の深さこそが、今なお人々を映画館へと引き寄せる決定的な要因なのだ。