川合の描く似顔絵を一目見た警察幹部や同僚の刑事たちは、誰もが言葉を失います。美術的な遠近法や陰影を無視したタッチは、一見すると「子どもの落書き」のようであり、少女漫画の初期を思わせる独特のデフォルメが施されているからです。
しかし、その絵を被害者や目撃者に見せた瞬間、劇的な変化が起こります。「この人です!」と即座に確信を持った返答が返ってくるのです。この現象が起きる最大の理由は、川合の画力が「顔のパーツ配置と特徴的なニュアンスを極限まで単純化・記号化する能力」に特化している点にあります。
一般的なデッサンが得意な人物が描く似顔絵は、緻密であるがゆえに「目撃者が漠然と覚えている印象」と細部のズレが生じやすく、かえって認知を狂わせる場合があります。対照的に川合の絵は、目撃者の心に残った「目つきの悪さ」「独特な輪郭のたるみ」「漂う雰囲気」といった核心部分のみを誇張して抜き出すため、人間の脳内イメージと驚くほど合致するのです。