返信ハガキを書く際、最も多くの人が迷うのが「敬称の消し方」と「宛名の書き換え」です。基本ルールは非常にシンプルで、「相手が自分に向けてくれた敬語を取り払い、相手に対する敬称を付与する」という相互関係の調整に集約されます。
1. 宛名面(表側):「行」「宛」を「様」へ書き換える
表面の返信先には、新郎新婦の氏名の下に「〇〇 行」や「〇〇 宛」と印刷されています。この「行」や「宛」をそのままにして送るのは重大な作法違反です。縦書きの場合は文字の上に縦の二重線(または右下がりの斜め二重線)を2本引き、その左隣または真下に「様」を丁寧に書き添えます。連名宛て(新郎新婦2名)になっている場合は、それぞれの「行」を二重線で消し、双方の下に「様」と書く必要があります。
2. 文面(裏側):「御」の消し方と「寿消し」の使い分け
裏面の出欠欄には、自分に対する敬称である「御」や「芳」が随所に印刷されています。これらはすべて消して返信します。
- 「御出席」の処理:「御」を定規を使って二重線で消し、「出席」の文字を丸で囲みます。その前後に「慶んで(喜んで)」と「させていただきます」を手書きで補い、「慶んで出席させていただきます」という一文に仕立てるのが最も丁寧な所作です。
- 「御欠席」の処理:欠席しない場合は、「御欠席」の文字全体を二重線で抹消します。
- 「御芳名」「御住所」の処理:氏名欄にある「御芳名」は、「御芳」の2文字を二重線で消して「名」だけを残します。「御」だけを消して「芳名」を残してしまうミスが多いため厳重な注意が必要です。また「御住所」の「御」も二重線で消します。
二重線の代わりに漢字の「寿」の文字を赤ペンや黒ペンで重ねて消す手法は「寿消し(ことぶきけし)」と呼ばれます。おめでたい場にふさわしい華やかな技法として知られますが、2026年のマナー基準では「定規を用いたすっきりとした二重線」が最もフォーマルで間違いのない正攻法と位置付けられています。寿消しは親しい友人や同僚宛てにとどめ、目上の上司や取引先、厳格な親族への返信では、奇をてらわずに二重線で端正に消すのが無難な選択です。
3. 使用するペンの選び方:黒インクが絶対条件
結婚式招待状の返信ハガキで使用する筆記具は、「毛筆」「筆ペン」「万年筆」、または「黒のボールペン(ゲルインク推奨)」が原則です。慶事において薄墨(うすずみ)は弔事を連想させるため厳禁であり、ブルーブラックや青、カラフルなボールペン、シャープペンシル、消せるインクのボールペン(フリクション等)は失礼にあたります。線の太さは0.5mm〜0.7mm程度の濃い黒インクを選ぶと、文字の輪郭が際立ち誠実な印象を与えます。