近年の臨床現場で顕著に増加しているのが、スマートフォンの長時間操作や長時間のPC作業に起因する「スマホ肘(肘部管症候群の初期段階)」です。肘を90度以上深く曲げた姿勢を維持し続けると、肘の内側を通る尺骨神経が強く引き延ばされ、骨と靱帯で囲まれた狭いトンネル内で圧迫を受け続けます。
日本整形外科学会の報告や関連医療機関の調査データによると、肘部管症候群は40代から60代以降の男性や肉体労働者に多い疾患とされてきましたが、スマートフォンの普及以降は20代から30代の若年層の受診率が上昇傾向にあります。SNSやQ&Aサイトでも「寝転がってスマホを持っていたら小指の感覚が麻痺してきた」「テレワークで肘掛けに寄りかかる癖がついてから指先がピリピリする」といった声が相次いでいます。
尺骨神経は皮膚のすぐ浅い位置を通っているため、机や椅子の肘掛けに肘の内側を押し付ける習慣があるだけでも、神経の局所的な虚血(血流不全)が生じます。初期段階では姿勢を変えれば治まる一過性のしびれであっても、毎日の微小な外力が積み重なることで、次第にしびれが持続的なものへと移行していきます。