ネット上のアンケートやSNSの調査を見ても、20代〜30代のビジネスパーソンで「背広」という語を日常的に使う人は全体の数パーセント程度に留まり、圧倒的多数が「スーツ」と表現しています。この現象から「背広はすでに死語なのでは?」と囁かれるようになりました。
呼称が置き換わった最大の要因は、1970年代から1980年代にかけての「紳士服量販店の台頭」と「メディアのカタカナ表記シフト」にあります。従来のテーラーで一着ずつ仕立てる「背広仕立屋」から、既製服をチェーン展開する「紳士服専門店」「スーツショップ」への構造転換が進み、若者向けプロモーションで「スーツ」という響きがスマートでモダンなイメージとして定着しました。
さらに、平成後期から令和にかけて進行した「クールビズ」や「オフィスカジュアル化」の波が拍車をかけました。「背広組(官公庁や大企業の事務系幹部・総合職)」という言葉に象徴されるような、昭和的な規律や組織の重圧を想起させるニュアンスが薄れ、より軽快で実用的なワードとして「スーツ」「セットアップ」が選ばれるようになったという社会学的な側面も見逃せません。