新今宮の駅を降り立つと、巨大な星野リゾートのホテルが視界を圧倒する。外国人観光客がスーツケースを引いて歩く舗装路から一本路地を入れば、そこは時間が止まったかのような異空間だ。ワンコインで買える弁当屋、シャッターの降りた居酒屋、車椅子で行き交う老人たち。行政と民間が進める「美化」の号令のもと、路上生活者は追い立てられ、かつてのドヤ(簡易宿泊所)は次々とバックパッカー向けゲストハウスへと姿を変えた。
しかし、表向きの街の浄化が貧困を解決したわけではない。厚生労働省の統計上、路上生活者数は年々減少しているように見える。だが現地で支援活動を続けるNPO関係者は声を潜めて語る。「路上から人が消えたのは、問題が解決したからじゃない。ただ施設や福祉アパートという名の『見えない部屋』に押し込められただけだ」。限界集落化した旧ドヤ街の部屋の中で、誰にも看取られずに息を引き取る孤立死が日常茶飯事となっている。