ノーパンしゃぶしゃぶという存在が単なる風俗記事の枠を超え、日本現代史の重大事件となった理由は、大蔵省(現・財務省)のエリート官僚たちに対する組織的な過激接待の舞台として使われていた点にあります。
事件の発端は1998年1月、東京地検特捜部が大蔵省の金融検査官らを収賄容疑で逮捕したことでした。民間銀行や証券会社には、大蔵省との折衝や情報収集を専門に行う「MOF担(モフたん:大蔵省担当者)」と呼ばれる精鋭社員が配置されていました。彼らは金融行政の機密情報(抜き打ち検査の日程や行政処分の内容)を事前に察知するため、官僚たちをノーパンしゃぶしゃぶ店に連日招き、1回あたり数十万円に及ぶ飲食費を負担していたのです。
公の場で見せた当時の大蔵事務次官らの深々とした謝罪と表情の翳りは、国民に強烈な不信感を植え付けました。この事件を決定打として、2001年の省庁再編時に強大な権限を誇った「大蔵省」は解体され、予算編成を担う「財務省」と、民間金融機関の監督・検査を一元的に担う「金融庁」へと完全に分離される歴史的転換を迎えました。