荻生徂徠とは何者か?朱子学批判と『政談』が変えた日本改革の真相

荻生徂徠とは何者か?朱子学批判と『政談』が変えた日本改革の真相

荻生徂徠とは何者か?朱子学批判と『政談』が変えた日本改革の真相の真相や最新動向に迫る! 専門的な視点で紐解きます。

享保の改革を進める徳川吉宗に対し、徂徠が直接献じた極秘意見書が『太平策』であり、それをさらに体系化して集大成としたのが全4巻からなる『政談』です。いずれも幕閣の目に触れぬよう配慮された最高機密文書でした。

『政談』の中で徂徠が喝破した江戸幕府の構造的病根は、武士が領地を離れて江戸に定住した結果生まれた「旅宿(りょしゅく)の境界」でした。武士が消費都市・江戸で生活することで、生活物資をすべて商人から金銭で購入せざるを得なくなり、豪商への借金が膨らんで困窮する。他方で農村は領主不在となり、統治が形骸化していると指摘しました。

この危機を打破するために徂徠が提言した主要政策は、現代の政策担当者をも驚かせる具体性を備えていました。

第一に「武士の土着化」です。武士を本来の領地である農村へ戻し、自給自足的な基盤を回復させることで、貨幣経済の波から武士団を守ろうとしました。第二に「市場経済の国家管理」です。物価高騰を防ぐため、商人のカルテル(仲間組織)を公認・統制し、価格統制と流通ルートの透明化を図るべきだと主張しました。

そして第三が「能力主義による人材抜擢」です。世襲制で無能な高給官僚がのさばる現状を激しく批判し、下級武士や民間の才能ある人材を試験や実績で登用する「人材登用令」の制度化を訴えました。吉宗はこの提言を部分的に取り入れ、役職に応じて一時的に石高を補填する「足高の制(たしだかのせい)」を導入。財政負担を抑えながら有能な人材を登用する画期的な人事制度が誕生しました。

田中 結衣
著者

田中 結衣

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。