加味逍遥散は、宋代の古典『太平恵民和剤局方』に収載された「逍遥散」をベースに、熱を冷ます生薬を加えた計10種類の生薬で構成されています。血液の不足を補いながら巡りを促し、上昇した熱を冷まして自律神経を安定させるという、精緻な設計が施されています。
配合されている生薬とそれぞれの役割は以下の通りです。
- 柴胡(さいこ)・薄荷(はっか):気の滞りを解きほぐし、精神的緊張や抑うつを和らげる
- 当帰(とうき)・芍薬(しゃくやく):不足した血液(栄養物質)を補い、血行を改善する
- 白朮(びゃくじゅつ)/蒼朮(そうじゅつ)・茯苓(ぶくりょう):水分代謝を整え、胃腸の働きを助ける
- 甘草(かんぞう)・生姜(しょうきょう):各生薬の調和を図り、胃腸を保護する
- 山梔子(さんしし)・牡丹皮(ぼたんぴ):「加味」された主役。上半身にこもった余分な熱を鎮め、炎症やのぼせを抑える
日本産科婦人科学会の診療ガイドライン等でも言及されている通り、加味逍遥散は更年期障害における不定愁訴の第一選択薬として確立しています。卵巣機能の低下に伴いエストロゲンが激減すると、脳の視床下部がパニックを起こし、自律神経系が過敏になります。その結果として生じる「急激なホットフラッシュ」「動悸」「不安感」「不眠」に対し、山梔子と牡丹皮が熱を冷まし、柴胡が神経の過興奮を鎮静化させます。
閉経前後の女性のみならず、20代〜30代の働く世代が直面する月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)に対しても極めて高い有効性を示します。排卵後から生理直前にかけて「パートナーや家族に理不尽な怒りをぶつけてしまう」「自己嫌悪で涙が止まらなくなる」といった情緒不安定に対し、自律神経の乱高下をフラットに戻すサポート役として定評があります。