大手予備校の教務担当者や現役の高校教員への取材によると、高校2年生の秋から共通テスト直前期にかけて実施されるマーク模試において、物質の結合様式や化学式の分類に関する小問の正答率は、毎年60%前後に留まる傾向が見られます。一見平易に見える基礎問でありながら、約4割の受験生が失点している背景には、教科書の記述を記号として丸暗記し、実体イメージが伴っていない実態が浮き彫りになっています。
実際に、教育現場や受験指導の最前線からは次のような具体的な指摘が上がっています。
「塩化カルシウムを CaCl2 と書ける生徒に『これは分子式か組成式か』と尋ねると、平然と『分子式』と答えてしまうケースが後を絶ちません。カルシウムが金属元素であること、そして水溶液中で電離するイオン結合物質であるという認識が分離してしまっている証拠です」(大手大学受験予備校・化学科講師の談話)
「共通テストの試行調査や本試験の設問分析を見ても、単純な物質名の知識ではなく『分子が存在しない物質の組み合わせとして正しいものを選べ』といった、結合の本質を問う出題が定着しています。記号の暗記だけで乗り切ろうとする受験生ほど、選択肢の巧妙なトラップに引っかかってしまいます」(首都圏私立高校・理科主任教諭の分析)
学習者の生の声を見ても、質問サイト等では「酢酸の分子式と示性式がごちゃ混ぜになる」「SiO2 がなぜ分子式ではないのか納得できない」といった悩みが散見されます。目先の定期テストを乗り切るための詰め込み学習が、学年が上がった段階で致命的な思考のボトルネックを引き起こしていることが観察されます。