浅草の西参道商店街入り口に佇む浅草花月堂本店は、昭和20年(1945年)に初代・結城正義氏が和菓子屋として創業した伝統を持つ名店です。長年培われてきた職人技と浅草の歴史を継承しながら、現在のメガヒット商品「ジャンボめろんぱん」を生み出したのは、現3代目の店主です。店主は東京農業大学で本格的に発酵学を専攻し、製粉メーカーの研究職として6年間小麦粉の特性を究めた異色の経歴を持ちます。平成13年の創業・業態転換を経て、平成19年に法人化された同店は、まさに製パンの科学と情熱が結実した場所といえます。
一般的なパン工場や一般的なベーカリーのメロンパンは、約40分から1時間程度のスピード発酵で効率的に焼き上げられます。しかし、浅草花月堂本店では通常の約3倍にあたる約3時間の低温長時間発酵を採用しています。その日の気温や湿度、小麦粉のロットごとの水分含有量を見極め、酵母菌が最も活性化する環境を分単位で微調整する手法です。
この徹底した発酵管理によって、生地内部には極めて繊細で気泡の細かいエアポケットが形成されます。外側のクッキー生地はサクサクと香ばしく焼き上がり、内側のパン生地は空気を含んで驚くほどふんわりと膨らみます。「見た目は巨大なのに、驚くほど軽くてペロリと食べられる」と評される理由の根底には、発酵学の専門的アプローチに裏打ちされた緻密な構造計算が存在しています。