ラムネを象徴する最大の特徴である「ビー玉」は、単なる子供向けのおもちゃや仕掛けではありません。19世紀の最先端物理学を応用した密閉のためのバルブ装置でした。
1. イギリスの発明家ハイラム・コッドの特許技術
1872年、イギリスの発明家ハイラム・コッド(Hiram Codd)が、王冠キャップが存在しなかった時代に炭酸飲料のガス漏れを防ぐ革新的なボトル「コッド・ネック・ボトル(Codd-neck bottle)」を考案しました。これが現在のラムネ瓶(玉瓶)の仕組みです。
仕組みは至ってシンプルかつ合理的です。瓶の中にガラス玉を入れ、炭酸飲料を充填して瓶を逆さにすると、内部から発生する炭酸ガス圧(約2.5気圧以上)によってビー玉が飲み口の内側にあるゴムパッキンへ強く押し付けられます。内圧そのものを利用して自律的に完全密閉する構造であり、コルク栓のように乾燥して炭酸が抜ける心配がありませんでした。
2. 「ビー玉」という言葉の語源にまつわる真実
ビー玉が入っている理由を探ると、しばしば「A玉・B玉説(規格に合格したA玉をラムネに使い、不合格のB玉をおもちゃにした)」という俗説がネット上で語られます。しかし、これは近年の玩具史研究やガラス製造資料によって否定された都市伝説です。
実際には、ポルトガル語でガラスを意味する「ビードロ(vidro)」から派生した「ビードロ玉」が省略されて「ビー玉」と呼ばれるようになった説が極めて有力です。職人の高度な技術によって真円に近い歪みのないガラス玉だけが、強いガス圧に耐えうる密閉栓として機能していました。