絵手紙の世界には、ネット上でまことしやかに囁かれるいくつかの誤解が存在します。これから始めようとする初心者が足踏みしてしまう最大の障壁について、事実関係を検証します。
誤解1:「デッサン力や絵の才能がないと恥ずかしい作品になる」
これは完全な誤解です。美術教育で求められる「客観的な正確さ」と、絵手紙の評価基準は根本から異なります。写真のように整った線画よりも、太かったり掠(かす)れたりしている線の方が、見る人の心に温もりを与えます。プロの指導現場でも「上手な絵を目指してはいけない。本物のトマトの重み、すいかの甘さを手紙の相手に伝えようとする熱量こそが全て」と指導されています。
誤解2:「最初に高級な専門道具を一式揃えなければならない」
画材店で売られている本格的な絵手紙初心者セットは、3,000円〜5,000円程度が相場です。これらは確かに顔彩の発色が美しく、長く愛用できる優れた道具ですが、最初から無理をして購入する必要はありません。近年の100円ショップで手に入る固形絵の具や水筆ペン、ハガキ用紙でも十分に魅力的な夏の絵手紙は成立します。
ただし、「ハガキ用紙の紙質」だけは注意が必要です。一般的なツルツルした官製はがきやケント紙では、絵の具が弾かれたり表面に溜まったりして、絵手紙独特の「滲み」が表現できません。100円ショップで購入する場合でも、必ずパッケージに「画仙紙(がせんし)」または「水彩画用」と明記されているものを選んでください。紙さえ適したものを選べば、道具の総額が500円未満であっても本格的な作品に仕上がります。