SNSやネット掲示板(Yahoo!知恵袋等)の体験談で目立つのが、「赤く腫れたニキビにボアラを塗ったら翌朝悪化して顔一面に広がった」「ニキビが膿んでしまった」という悲痛な訴えです。ここには、抗炎症作用と抗菌作用の致命的な取り違えが存在します。
尋常性痤瘡(ニキビ)の本態は、過剰な皮脂分泌と毛穴の角化、そして毛包内におけるアクネ菌(Cutibacterium acnes)の異常増殖による細菌感染症です。ボアラ軟膏などのステロイド外用薬は、免疫応答をシャットダウンすることで赤みや腫れを抑えます。ニキビに塗布すると、一時的に免疫系が活動を休止して赤みが引いたように錯覚しますが、局所の防衛軍が沈黙した毛穴の内部では、アクネ菌や皮膚常在真菌(マラセチア菌)が天敵不在の状態で爆発的に増殖します。
その結果、数日後には通常のニキビよりも遥かに治りにくい「ステロイド痤瘡(ステロイドニキビ)」や「毛包炎」を引き起こし、毛穴ごとに白い膿疱が多発する事態に陥ります。ボアラ軟膏の添付文書(日経メディカル処方薬事典等参照)の禁忌欄には「細菌・真菌・スピロヘータ・ウイルス皮膚感染症」が明記されています。ニキビやヘルペス、水虫(白癬)にステロイドを塗布することは、火に油を注ぐ行為に他なりません。