ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「甲斐性がない」という言い回しが「単に稼ぎが悪い男性」への悪口として短絡的に消費されている場面が散見されます。しかし、歴史的背景を紐解くと、これは重大な誤解を含んでいます。
「甲斐性」とは本来、金銭的な多寡だけを指す語ではありません。行動を起こして成果に結びつける頼もしさ、物事を引き受けてやり遂げる「始末をつける気概」全般を意味していました。現代風に言えば、困難に直面しても自ら道を切り拓く問題解決力こそが甲斐性の本質です。
また、現代特有の心理的リスクとして注意したいのが、「甲斐がある」という感覚に過度に依存してしまう心理的罠です。行動経済学で言う「サンクコスト効果(埋没費用効果)」に囚われると、「ここまで苦労したのだから、絶対に甲斐があったと思える結果を出さなければならない」と視野狭窄に陥り、損切りすべき泥舟のプロジェクトから撤退できなくなる事態を招きます。「甲斐」を求める執着が、かえって傷口を広げる要因にもなり得る点は見落とされがちです。