子どもの運動指導の現場で必ず引き合いに出されるのが、アメリカの医学者リチャード・スキャモンが提唱したスキャモンの発達曲線です。この曲線は、人間の身体各器官の成長パターンを「リンパ型」「神経型」「普通型(骨・筋肉)」「生殖型」の4つに分類したもので、神経系の発達には極めて鋭いピークがあることを示しています。
スキャモンの発達曲線によれば、脳や脊髄、感覚器などの「神経型」は、5〜6歳までに成人の約80%、そして12歳前後でほぼ100%の発達を遂げます。この9〜12歳前後の時期は、スポーツ科学においてゴールデンエイジ期の運動能力獲得期と呼ばれ、一度見た動きをその場ですぐに習得できる「即座の習得(Immediate Acquisition)」が可能な、一生に一度のボーナスステージとされています。
では、12歳を過ぎて大人になってしまったら、もう運動神経を向上させることは不可能なのかといえば、最新の脳科学はそれを明確に否定しています。人間の脳には、生涯にわたって刺激に応じて神経回路を再編・強化する神経可塑性(Neuroplasticity)が備わっています。大人の場合、子どものような無自覚の急速吸収こそ起きないものの、「動作の言語化・論理的理解」と「視覚・感覚のフィードバック」を組み合わせることで、強固な神経ネットワークを何歳からでも新設することが可能です。