口唇口蓋裂を巡る情報環境には、古い迷信や偏見に基づく「認知の歪み」が依然として根深く存在します。その代表例が「一生消えない重い障害」「言葉をまともに話せなくなる」という過度な悲観論です。しかし、形成外科学および言語聴覚療法の進展により、現代の治療水準は過去のイメージを完全に刷新しています。
近年では口唇口蓋裂 芸能人や有名人の公表や当事者発信が、社会的なスティグマ(偏見・烙印)を打破する大きな力となっています。海外ではアカデミー賞主演男優賞を受賞した名優ホアキン・フェニックスが唇に特徴的な痕を持つことで知られ、MLBの第一線で活躍したプロアスリートなど、世界的な著名人がその個性を堂々と開示しながら頂点を極めています。
日本国内でも、モデルやインフルエンサー、スポーツ選手が「実は生まれつき口唇口蓋裂だったが、手術と歯科矯正を経て今の自分がある」とメディアやSNSで公表する事例が相次いでいます。こうした公の場での発信は、「口唇口蓋裂は隠すべき恥部ではなく、現代医療によって克服可能な通過点に過ぎない」という客観的な事実を広く世に浸透させる契機となっています。
また、ネット上では「親戚に同じ病気を持つ人がいないから遺伝ではないはずだ」「いや、先祖の祟りや業ではないか」といった非科学的な言説が持ち出されることがありますが、前述の通り多因子遺伝のメカニズム上、家系内に過去の罹患者が全く存在しないケースが全体の8割以上を占めます。家系図を遡って誰かの責任を追及すること自体が、医学的に何の意味も持たない誤謬(ごびゅう)です。