観念的競合が成立した場合、刑罰は「科刑上一罪(かけいじょうのいっざい)」として処理されます。これは、罪の数としては複数成立している(実質的数罪)と認めつつも、刑罰を科す段階では1つの罪として扱い、「その最も重い刑により処断する」(刑法54条1項後段)というルールです。
具体的に刑罰がどのように決まるのか、分かりやすい例で見てみましょう。
例えば、1つの行為によって「懲役3年以下の罪(A罪)」と「懲役10年以下の罪(B罪)」が同時に成立したとします。この場合、併科して合計13年になるわけではなく、法定刑の上限がより重いB罪の基準(懲役10年以下)の範囲内で最終的な宣告刑が言い渡されます。
ただし、単純に上限だけを比較するわけではありません。下限や罰金刑の選択肢など、各罪の法定刑の最も重い部分を抽出して合成した「最も重い処断刑の範囲」が設定されます。複数の被害者や法益を侵害している事実は、その枠内での量刑判断(裁判官が何年の判決を下すか)において、情状の悪さとしてしっかり考慮される仕組みです。