インターネットの掲示板やSNSでは、定期的に「スネ夫の正面顔が怖すぎる」というスレッドが立ち、まとめサイトの定番ネタとして消費されている。スネ夫正面顔ネットの反応を定性調査すると、「狂気を感じる」「夢に出てきそう」「クトゥルフ神話の眷属か」といったユーモラスながらも本能的な恐怖を訴える声が目立つ。
読者が抱くスネ夫正面顔怖い理由は、認知心理学における「不気味の谷現象」と「顔認知のゲシュタルト崩壊」で論理的に説明できる。人間の脳には側頭葉に「紡錘状顔領域(FFA)」という部位が存在し、他者の顔の配置(二つの目が水平に並び、その下に鼻、さらにその下に口があるという対称性)を極めて敏感にスキャンしている。ところが、スネ夫の正面顔では、目は正面を向いて対称であるにもかかわらず、咀嚼器官である口だけが頬の骨格を無視して横に飛び出している。この「人間の顔としての整合性の致命的な狂い」が、脳に強い認知的不協和を生じさせ、生理的な恐怖や違和感として処理されるのだ。
ここで重要な誤解を正しておかなければならない。Web上でよく見かけるドラえもん作画崩壊まとめにおいて、スネ夫の正面顔はあたかもアニメーターの手抜きや技術不足であるかのように扱われることが多い。しかし現場の制作記録を照らし合わせると、これは完全な誤謬であることがわかる。アニメーターたちは「デッサンが狂っていること」を百も承知の上で、原作者が確立した記号の強烈さを画面上で維持するために、あえて意図的な変形(デフォルメ)を施しているのだ。これを単純な作画崩壊と断じるのは、アニメーション表現の本質を見誤っていると言わざるを得ない。