プロ野球の試合中、ファンが最も混乱しやすいのが守備エラーが絡んだイニングの計算です。記録員がどのような思考プロセスで判定を下しているのか、その鍵を握るのが「イニングの再構成」と呼ばれる鉄則です。
公式記録員は、守備側の失策が発生した瞬間から、頭の中で「もしエラーが起きず、正常にアウトが成立していたらどうなっていたか」というパラレルワールドのイニングを描き直します。この作業によって、自責点がつくケースとつかないケースの境界線が浮き彫りになります。
分かりやすい例が「2死からの失策」です。ツーアウト走者なしの場面でサードが簡単なゴロをトンネルし、走者が一塁へ生きたとします。本来であれば、この時点でスリーアウトチェンジとなり、その回の攻撃は終了していました。したがって、このエラーの直後に相手の4番打者が特大の2ランホームランを放ったとしても、投手に記録されるのは「失点2・自責点0」となります。仮にその後、打者一巡の猛攻で10点を奪われたとしても、2死後のエラー以降に生まれた得点は、すべて自責点には数えられません。
一方で、無死走者なしから内野手がエラーをし、その後に連打を浴びて失点した場合は話が異なります。エラーがなくてもアウトが1つ増えただけでイニングは継続していたとみなされるため、後続打者のヒットによる生還は「投手の責任」と判定され、自責点が記録されるケースが一般的です。