臨月の健診で多くの妊婦が恐れるのが、いわゆる「内診グリグリ」と呼ばれる医療処置です。正式名称を「卵膜剥離(らんまくはくり)」と呼びます。診察台の上で思わず声が出るほどの激痛を伴うことが多く、SNS上でも「陣痛より痛かった」「健診がトラウマになる」といった声が散見されます。
なぜこの処置はこれほど痛むのでしょうか。そしてなぜ行われるのでしょうか。
解剖学的に、臨月の子宮口周辺には無数の知覚神経が密集しています。卵膜剥離では、医師が指先を子宮頸管から子宮内口へと進入させ、子宮壁と卵膜の接着面を用手的に剥離させます。この剥離刺激により、組織から局所ホルモンである「プロスタグランジン」が大量に分泌されます。プロスタグランジンは子宮頸管を軟化させ、子宮収縮(陣痛)を誘発する強力な作用を持っています。つまり、陣痛を促すために意図的に強い機械的刺激を与える処置であるため、強い痛みを伴う構造になっているのです。
また、臨床では子宮口の開き具合(cm)だけでなく、「ビショップスコア(Bishop score)」と呼ばれる総合的な頸管熟化度指標が用いられます。
- 開大度(何cm開いているか):0〜3点
- 展退度(子宮頸管がどれだけ薄くなっているか):0〜3点
- 児頭の下降度(赤ちゃんの頭が骨盤内にどれだけ降りているか):0〜3点
- 子宮口の硬度(鼻の頭のように硬いか、唇のように柔らかいか):0〜2点
- 子宮口の位置(後方か、中央・前方か):0〜2点
合計13点満点中、9点以上であれば「頸管熟化良好(お産が近い)」と判定され、4点以下では陣痛誘発を行っても分娩に至るまで時間がかかりやすいと判断されます。「子宮口がまだ開いていない」と言われても、実は頸管が薄くなり位置が前方に移動しているなど、目に見えないお産の準備は着実に進んでいるケースが多々あります。