街頭観察やSNSのコミュニティで交わされる議論を分析すると、歩くのが遅い当事者と周囲の認識には著しい温度差が浮き彫りになります。
ネット掲示板や知恵袋などの告白欄には、「決してわざとゆっくり歩いているわけではなく、周りの速さについていけない」「歩きながら次の予定や考え事に没頭してしまう」といった当事者の声が数多く投稿されています。心理学的には、注意が内面に向きやすい内向的な気質や、物事を慎重に吟味する熟慮型の性格を持つ人は、歩行運動に対する意識配分が減少し、結果として歩調が緩やかになる傾向が認められています。
さらに見過ごせないのが「育ち」と地域文化の影響です。一般社団法人日本生活習慣病予防協会などの各種地域統計や都市動態調査によると、大都市圏(東京・大阪など)の平均歩行速度が時速5.0km前後に達するのに対し、地方都市や車社会が定着した地域では時速3.8〜4.2kmにとどまるという顕著な開きが見られます。子どもの頃から車移動が中心で歩行者を意識する機会が少なかった環境や、時間の流れが穏やかな地域で育った人は、人混みでテンポを上げること自体に強い心理的負荷を感じるのです。