虫歯菌や歯周病菌以外の要因で生じる口まわりの構造的トラブルも、歯科口腔外科の得意とする領域です。患者自身が原因を特定できずに悩むケースが目立ちます。
1. 開口障害と顎の激痛を伴う「顎関節症」の外科的アプローチ
口を開けるときに音が鳴る初期段階であれば、生活習慣指導や就寝用マウスピース(オクルーザルスプリント)による保存療法が基本です。しかし、関節円板が前方に大きく転位して骨と骨が引っかかり、指2本分も口が開かなくなる「クローズドロック状態」に陥った場合、歯科口腔外科ならではの処置が必要になります。
局所麻酔下で顎関節腔内に針を刺入し、関節内の炎症性物質を洗い流して潤滑剤(ヒアルロン酸等)を注入する「顎関節腔洗浄療法(パンピングポンピング)」や、関節鏡下手術によって癒着を剥離する高度な治療が選択されます。
2. 骨がコブ状に突出する「骨隆起」の外科的切除
下顎の内側や上顎の中央(口蓋部)に、硬い骨のコブが盛り上がってくる現象を「骨隆起」と呼びます。良性の骨増殖であるため放置しても悪性化する心配はありませんが、以下のような支障が出た場合は外科的切除の適応となります。
- 骨の突起が邪魔をして、部分入れ歯や総入れ歯が痛くて装着できない
- 舌の動きが制限され、滑舌や構音に重篤な障害をきたしている
- 突起部分の薄い粘膜に硬い食べ物が当たって頻繁に傷つき、潰瘍を繰り返す
局所麻酔下で粘膜を剥離し、ピエゾサージェリーや回転バーを用いて突出した骨を削合・平坦化する手術は、日帰りかつ30分〜1時間程度で完了します。
3. 奥歯の虫歯から鼻に膿が回る「歯性上顎洞炎」
「黄色い悪臭のする鼻汁が出る」「片側の頬骨の奥が重苦しく痛む」といった症状で耳鼻科を受診したものの、抗生剤を飲んでも一向に再発を繰り返す場合、上の奥歯の感染が原因となる「歯性上顎洞炎」が疑われます。
上顎の奥歯の根の先端は、副鼻腔(上顎洞)の底と薄い骨一枚を隔てて接しています。虫歯の放置や根管治療の不備、重度の歯周病によって歯根先端の炎症が上顎洞粘膜へ波及すると、副鼻腔内で激しい蓄膿を引き起こします。耳鼻咽喉科と歯科口腔外科が密接に連携し、原因となっている歯の抜歯や外科的歯内療法(歯根端切除術)、上顎洞洗浄を並行して行うことが完治への最短ルートとなります。