インターネットの検索窓に「黄泉比良坂」と入力すると、関連ワードとして「行ってはいけない」「心霊スポット」「やばい」といった不穏なフレーズが並びます。一部のオカルト系メディアでは「霊障が起きる」「異界に引きずり込まれる」といった過激な煽り文句が見受けられますが、現地取材および民俗学的見地から検証すると、その実態はまったく異なります。
文化人類学や民俗学において、集落と未開の山林、あるいは生者の領域と死者の領域を分かつ場所は「境界(辻・坂・峠)」と呼ばれ、古代から強いタブー視と神聖視が混在してきました。古代の人々は、境界を越えてやってくる疫病や死のケガレを防ぐため、坂の入り口に巨石を置き、道祖神や塞の神(さえのかみ)を祀って厳重に結界を張ったのです。
つまり、「行ってはいけない」という語り口は、「死の穢れを持ち込ませないための古代の結界意識」が現代のオカルト的恐怖心へと誤変換されたものに過ぎません。冷やかしや肝試し目的で訪れる行為は厳に慎むべきですが、敬意を持って真摯に参拝する限り、恐れる必要は一切ありません。