熊の手が「調理人泣かせ」と呼ばれる理由は、口に入る状態にするまでに最低でも3日〜7日間を要する過酷な下処理工程にあります。毛皮と爪に覆われた生の状態から料理へと昇華させる手順は、まさに職人の執念そのものです。
ステップ1:泥落としと長時間の下茹で
流水で徹底的に泥や汚れを洗い流した後、米ぬかや酒、生姜を加えた湯で数時間から半日かけてじっくりと茹でます。急激に強火で煮ると皮が破れてコラーゲンが流出するため、80度前後の温度を維持し続ける緻密な火加減が求められます。
ステップ2:ピンセットによる完全な毛抜き作業
皮が適度にふやけた段階で、熱いうちに表皮の角質と毛を一本一本ピンセットや専用の骨抜きで除去します。毛根が残ると食感を著しく損ない、強烈な獣臭の原因となるため、拡大鏡を使って数時間かけて完璧に抜き切る必要があります。
ステップ3:爪と不要な骨の除去、臭み抜きの水晒し
硬い爪を切り落とし、掌の形を崩さないように注意しながら関節の余分な骨を外します。その後、流水に丸一日晒して血抜きと油抜きを徹底します。
ステップ4:香味素材とともに数十時間の本格煮込み
下処理を終えた熊の手を、丸鶏、豚すね肉、金華ハム、干し椎茸、ネギ、生姜、紹興酒とともに弱火で10時間以上煮込みます。調味液の旨味を時間をかけて内部まで浸透させ、最後にオイスターソースや濃口醤油ベースのとろみ餡を絡めて完成させます。