落合由美さんが事故後、入院中に綴った「日航機墜落事故 スチュワーデス 手記」は、異常発生から墜落、そして救助を待つ夜の山中までを分単位で記録した類を見ない一次証言です。
18時24分、相模湾上空を巡航高度へ向け上昇中、突如として後方上空から「ドーン」という鈍く大きな爆発音が響き渡りました。直後に客室内は急減圧に見舞われ、頭上から酸素マスクが一斉に落下。客室高度警報の電子音が鳴り響くなか、機内には白い霧のような靄(減圧による断熱冷却現象)が立ち込めたといいます。
手記には、絶体絶命の危機に直面しながらも規律を保ち続けたクルーたちの姿が生々しく描写されています。
「酸素マスクを着用してください」「シートベルトをお締めください」――勤務中の客室乗務員たちは、酸素ボトルを抱えながら機内を巡回し、不安に怯える乗客一人ひとりに声をかけて回りました。落合さん自身も非番でありながら、周囲の乗客に酸素マスクの装着法を教え、座席下の救命胴衣(ライフベスト)の着用を指導しました。
コックピットでは、機長・副操縦士・航空機関士の3名が操縦不能に陥ったジャンボ機を立て直そうと必死の格闘を続けていました。日航ジャンボ機墜落事故のボイスレコーダー(CVR)には、機長の「あたま下げろ!」「パワー!」という叫び声とともに、機内アナウンスを通じて「ただいま緊急降下中。指示に従ってください」と毅然と呼びかける乗務員の声が記録されています。
機体が激しく左右にローリング(ダッチロール)し、急上昇と急降下(フゴイド運動)を繰り返す中、客室内では悲鳴や泣き叫ぶ声は一時的に上がったものの、暴動やパニック状態に陥ることはありませんでした。乗客たちは家族宛ての遺書を手帳や紙袋に書き留め、クルーの「頭を下げて、衝撃に備えてください(ブレイス・ポジション)」という指示に従い、静かに最期の瞬間に備えていたと落合さんは証言しています。