風邪を引いた際に生じる耳が聞こえにくい原因の多くは、鼻の奥(上咽頭)と鼓膜の奥(中耳腔)を連絡している「耳管(じかん)」と呼ばれる細い管のトラブルに起因します。通常、耳管は普段閉じており、唾を飲み込んだりあくびをしたりする瞬間にだけ開いて中耳の気圧を外気圧と同等に保つ調圧弁の役割を果たしています。
風邪のウイルスや細菌によって鼻粘膜が腫れ上がると、耳管の鼻側開口部(耳管咽頭口)が塞がれてしまいます。これによって耳管が狭くなり、開閉がスムーズにいかなくなる病態を耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)と呼びます。中耳内の空気が粘膜に吸収されて陰圧(気圧が下がった状態)になり、鼓膜が内側に強く引き込まれることで、特有の「耳が詰まった感じ(耳閉感)」や「音がこもる感覚」が発生します。
さらに炎症や陰圧状態が持続すると、血管から染み出た浸出液が中耳腔に溜まる滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)へと進行します。この疾患の最大の特徴は、「激しい耳の痛みや発熱を伴わないのに耳が詰まる」点です。激痛を伴う急性中耳炎と異なり、痛みが目立たないために「そのうち治るだろう」と見過ごされやすい危険をはらんでいます。