インターネット上の掲示板やSNSでは、「粉瘤を自分で絞り出して中の塊を取ったら平らになった」という武勇伝のような書き込みを目にすることがあります。しかし、医学的な見地から断言すれば、「中身を押し出して粉瘤が完治した」という現象は100%あり得ません。一時的にしこりが縮んだように見えても、それは中身の老廃物が一時的に抜けただけに過ぎないのです。
粉瘤(正式名称:アテロームまたは表皮嚢腫)の本態は、皮膚の内側に形成された「袋状の組織(嚢腫壁)」です。本来であれば皮膚のターンオーバーによってアカや皮脂として剥がれ落ちるはずの物質が、袋の内側にミルフィーユ状に蓄積され続ける構造を持っています。
自力で力任せに圧迫すると、皮膚の表面に開いたわずかな開口部(面皰)から白濁した老廃物が出てくることはあります。しかし、どれほど強く絞り出しても、皮下に強固に癒着した袋自体を指で引き剥がすことは不可能です。結果として、粉瘤の袋を取り残す再発リスクはほぼ100%となり、数か月から1年も経てば再び老廃物が溜まって元の大きさに戻るか、以前よりも肥大化してしまいます。
さらに深刻なのが、粉瘤を無理に押し出す危険性です。指で皮膚を強くつまみ上げると、開口部から外へ向かう圧力だけでなく、皮下の内部組織に向かっても強烈な圧力がかかります。皮膚の奥で薄い袋が耐えきれずに破裂すると、それまで袋の中に閉じ込められていた大量の角質と細菌が皮下組織へ一気に漏れ出し、劇症的な異物反応と細菌感染を引き起こします。「自分で潰す」という行為は、治癒への近道どころか、自ら事態を爆発的に悪化させる引き金にほかなりません。