報道の第一線で活躍していた石井氏の才能に強く惹きつけられたのが、日本映画界の巨匠・伊丹十三監督でした。知性と野生味、そして大人の女性特有の色気を併せ持つ彼女の存在感に着目した伊丹監督は、自らの作品への出演を熱烈にオファー。こうして彼女は、ジャーナリストから女優という大胆な越境を果たすことになります。
その代表作となったのが、1990年公開の大ヒット映画『あげまん』です。名優・宮本信子氏や津川雅彦氏らと堂々たる共演を果たし、作中では主人公と対比される重要なキーパーソンを熱演。スクリーンのなかで見せた妖艶さと知的な気品が入り混じる演技は映画関係者の間でも絶賛され、新人女優としての枠を遥かに超えた評価を獲得しました。
さらに伊丹映画の金字塔『ミンボーの女』(1992年)や『大病人』(1993年)などにも立て続けに出演。ドラマや舞台へと表現の幅を広げていきました。当時の映画誌インタビューで彼女は「演じることは他者の人生を徹底的にリサーチし、追体験する作業。それはジャーナリズムと根底で通じている」と語っており、役柄に対するストイックな探求姿勢がその演技力に結実していました。