同国の驚異的な躍進を牽引してきたのは、何と言っても軽工業の力です。バングラデシュ経済成長の背景を語る上で欠かせないのが、輸出額の8割以上を叩き出すバングラデシュの縫製業とアパレル輸出(RMG産業)の存在です。
安価で勤勉な労働力を武器に、欧米のH&MやZARA、日本のファーストリテイリング(ユニクロ)など世界的アパレル大手が次々と生産拠点を中国から移転。中国に次ぐ世界第2位の既製服輸出国へと上り詰めました。これにより農村部から流出した数百万人の女性たちが工場労働者として現金収入を得るようになり、女性のエンパワーメントと貧困削減に大きく寄与したことは間違いありません。
しかし、この一本足打法とも言える産業構造には深刻な歪みも存在します。最低賃金の引き上げを求める労働者の大規模ストライキや工場の放火事件が定期的に発生し、インフレに伴う生活苦が労使対立を激化させています。さらに、国連の「後発開発途上国(LDC)」枠からの卒業が近づくにつれ、これまで享受してきた関税優遇措置の縮小という厳しい現実が迫っています。産業の高度化とITや医薬品産業への多角化が急務であり、単なる「安価な労働力供給地」からの脱却が試されています。