「なぜ同じ看板を背負うラガーが2種類存在するのか」という疑問を紐解くには、平成初期に起きた日本のビール戦争を振り返る必要があります。
1980年代後半、アサヒビールの「スーパードライ」が巻き起こしたドライ旋風により、国内ビール市場の勢力図は激変しました。それまで国内シェアの6割以上を独占していたキリンビールの屋台骨「キリンビール(熱処理)」に対し、消費者の嗜好は「キレのある辛口生ビール」へと急速に傾斜していったのです。
焦眉の急を要したキリンは、社運を賭けて1996年に主力商品であるラガーの「非熱処理(生ビール)化」を断行しました。しかし、この大改革は市場に凄まじい波紋を広げます。洗練された爽快さを歓迎する新規ファンがいた一方で、長年その重厚な苦味を愛してきたオールドファンからは「昔のキリンの味ではなくなった」「あのガツンとくる苦味を返してほしい」という悲痛な声が殺到したのです。
そうした愛飲家からの熱烈な要望と時代の声に応えるため、キリンが2001年に満を持して世に送り出したのが「キリンクラシックラガー」でした。開発陣が味の指標として定めたのは、高度経済成長期に日本中の食卓を支え、キリンの黄金期を築き上げた「昭和40年(1965年)当時の味わい」です。当時の醸造記録を綿密に紐解き、熱処理製法による芳醇なコクと苦味を完全復活させました。