方言としてのいけずの意味を辞書的に引くと、「意地悪」「意地が悪いこと、またその人」と定義されます。主に近畿地方全域で広く使われる意地悪の方言ですが、地域や話者によってそのニュアンスには明確なグラデーションが存在します。
言葉の成り立ちを探ると、いけずの語源は動詞「行く」に打消の助動詞がついた「行けず」に由来します。「物事がスムーズに行かない」「道理が行き届かない」「行動が常軌を逸して行き詰まる」といった状態を表す言葉が転じ、人の性質や態度を指すようになりました。
興味深いのは、大阪を中心とする一般的ないけず(関西弁)と、京都特有のいけず(京都弁)で受ける印象が大きく異なる点です。
大阪や兵庫などの上方エリアでは、「もう、いけず言わんといてぇな」「ほんまいけずやわ〜」といった具合に、会話のテンポを生み出すツッコミや、親しい間柄での甘え・からかいとしてフランクに飛び交います。一方で京都における「いけず」は、より静かで雅やかなオブラートに包まれ、相手との心理的バウンダリー(境界線)を保つための牽制球として機能するケースが目立ちます。