初夏の風物詩として親しまれるアヤメ科の「アヤメ(文目・菖蒲)」「ハナショウブ(花菖蒲)」「カキツバタ(杜若)」。これら三名花を正確に見極めるための最大のチェックポイントは、垂れ下がった外側の花びら(外花被片)の付け根部分にある模様です。
まず、あやめの花びらには独特の網目模様が入っています。「アヤメ(文目)」という名前自体が、この美しい網目模様=「文様(あや)」に由来するという説が有力です。花びらの基部が黄色く色づき、その上に細かく繊細な網目状のラインがくっきりと走っているのが最大の特徴です。
一方、ハナショウブには黄色い斑紋が鮮やかに浮かび上がります。花の中心部に向かって三角形やひし形に近いシャープな黄色いサインが入っており、アヤメのような網目状の線は入りません。江戸時代から品種改良が盛んに行われ、現在では数千種にも及ぶ園芸品種が存在しますが、この黄色い目印だけは共通のアイデンティティとして受け継がれています。
そして、カキツバタには中央に白い筋が一本スーッと通っています。花弁の付け根から外側に向かって、純白の直線的なラインが伸びているため、紫や藍色の花びらとのコントラストが際立ちます。万葉集の時代から愛歌に詠まれてきた気品ある姿は、このクリアな白筋によって見事に識別できます。
花だけでなく菖蒲とあやめの葉脈の違いも見逃せません。ハナショウブの葉には中央に太くて硬い「主脈(隆起線)」が1本〜2本はっきりと盛り上がっています。対して、カキツバタの葉は幅が広く主脈がほとんど目立たず平滑です。アヤメの葉は細くしなやかで、葉脈の主張は控えめです。花が咲いていない時期でも、葉の中央を指先で優しく挟んでなぞるだけで、ハナショウブの明確な突起を感じ取ることができます。