かつての日本企業では「転勤の拒否=退職勧告」という暗黙の圧力が支配的でした。しかし、近年の裁判所の司法判断および労働法規の厳格化により、企業側の配転命令権(労働契約法上の裁量権)は無制限ではないという判例法理が完全に確立されています。
労働基準法および最高裁判所の判例(東亜ペイント事件など)において、転勤命令が無効とされるのは以下の3つの要件に該当する場合です。
- 業務上の必要性が存在しない、または著しく低い場合
- 不当な動機・目的(退職へ追い込むための嫌がらせ、報復人事など)が存在する場合
- 労働者に対して「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」を負わせる場合
特に実務上争点となるのが3つ目の「著しい不利益」です。どのような状況であれば「単身赴任の内示を拒否できる正当な理由」として法的に認められるのでしょうか。近年の労働紛争における主要な基準は以下の通りです。
もし内示を拒否したいと考えるなら、「単に行きたくない」という感情論ではなく、「家庭状況の客観的証拠(診断書、介護認定書、自治体の相談記録)」を揃え、育児介護休業法第26条(勤務地の配慮義務)に抵触することを人事部門に論理的に提示することが交渉の鉄則です。