なぜ今、三井住友海上駿河台新館を巡って売却や拠点再編の議論が取り沙汰されているのでしょうか。その最大の要因は、金融庁の指導に伴う政策保有株式のゼロ化方針と、それに連動したコーポレートガバナンス改革・資本効率の向上策にあります。
MS&ADインシュアランスグループホールディングスをはじめとするメガ損保各社は、資本効率の指標であるPBR(株価純資産倍率)1倍超の安定的維持とROEの引き上げを強く意識した経営へと舵を切っています。これまでバランスシート上に抱えてきた多額の固定資産(自社保有オフィスビルなど)は、時価会計やオフバランス化の観点から徹底的な見直し対象となっており、「不動産の所有から利用へ」というセール&リースバック(売却後に賃借して利用を継続する手法)の選択肢が現実味を帯びて議論されてきました。
さらに、業務プロセスのDX推進とハイブリッドワークの定着により、実出社率が50%〜60%前後で推移する中、広大な自社専有フロアをそのまま維持することは固定費の観点からも非効率となります。東京海上日動火災保険が丸の内本社ビルの建て替え・仮移転を進めるなど、業界全体でオフィス集約と流動化の動きが加速している事実が、駿河台新館の動向に対する市場の関心を一気に高める引き金となりました。