「れから始まる食べ物」を尋ねられた際、9割以上の人が真っ先に挙げるのが「レタス」と「れんこん」です。しかし、その2つを言い終えた途端、急激に思考が停止してしまう現象には明確な言語学的・認知心理学的理由があります。
日本語の歴史的音韻法則において、古来の大和言葉(和語)には語頭に「ら行」が立たないという原則が存在します。つまり、日本語本来の語彙には「れ」から始まる言葉が元々存在せず、現代私たちが使っている「れ」から始まる単語の98%以上は中国由来の漢語(冷、蓮など)か、近代以降に入ってきた西洋外来語(レタス、レモン、レアチーズなど)で構成されています。広辞苑などの国語辞典をめくっても、「れ」で始まる見出し語のページ数は全体のわずか1%前後に過ぎません。
さらに厄介なのが、日常の認知度が高い単語に限って「れんこん」「レモン」「レーズン」のように語尾が「ん」で着地する点です。しりとりなどの瞬発力を競うゲームにおいて、脳は「思い出しやすい単語」を優先的に検索しますが、そこには「言った瞬間に負けが確定する地雷」が埋まっています。定番のレタスやれんこんの奥に広がる語彙の引き出しをあらかじめ整理しておくことが、沈黙を回避する決定的な鍵となります。