詐欺スリラーの出来栄えは、騙す側だけでなく「騙される側」の迫真性に大きく依存する。その意味で、大手デベロッパー「石洋ハウス」の社内政治に焦り、100億円規模のメガ物件へ突っ走る川井社長を演じた山本耕史の演技は傑作だった。
ライバルを蹴落としたい焦燥感、手柄を焦るエリート特有の慢心。山本は、肉体美とギラついた野心を前面に出しながら、罠に向かって一直線に突き進む人間の脆さを残酷なほどリアルに描き出した。地主のなりすまし面談で見せた、疑念と確信の間で微細に揺れる目線の動き。単なるマヌケな被害者ではなく、「欲望に目を眩ませた現代人のリアル」をスクリーンに刻みつけた。