かつてドラマ『マルモのおきて』で日本中を温かい涙で包んだ阿部サダヲと芦田愛菜の共演は、映画の発表当時から大きな話題を集めた。しかし本作でのふたりは、感動の再会という甘いトーンだけでは終わらない。漆崎茂を演じた阿部は、酒と煙草とジャンクフードに依存し、体内の細胞たちを絶望の淵に叩き落とすブラック体内の主として強烈なリアリティを醸し出した。
一方で芦田愛菜演じる日日乃の体内は、フレッシュな細胞たちが生き生きと働く理想郷。整然としたホワイト企業のような体内環境と、崩壊寸前のブラック体内のギャップは、観客自身の生活習慣への警鐘としても機能した。この親子の対比が見事だったからこそ、クライマックスでの父親の体内危機が持つ緊張感が一層際立ったのである。