西洋医学の医薬品であれば、「有効成分が多いほど鎮痛作用が強い」といった比例関係が成立しやすい。しかし、西洋医学とは異なる独自の診断体系を持つ漢方医学において、その常識は通用しない。漢方で最も重視されるのは、個人の体質や病状の相性を表す「証(しょう)」という概念だ。どんなに優れた満量処方であっても、患者の「証」に合っていなければ十分な効果が得られないばかりか、かえって体調を崩す原因となる。
診察室で日々患者と向き合う医師や、カウンターで健康相談を受ける薬剤師は、口を揃えて「強い薬を飲めば早く治るという思い込みを捨ててほしい」と警鐘を鳴らす。たとえば胃腸が弱い人が強力な生薬成分を含む満量処方を飲めば、胃もたれや食欲不振に苦しむことになる。自分の体に足りないものを補うのか、滞っているものを排出するのか。個々の体質を見極めずに成分量だけで選ぶ行為は、漢方医学の本質から大きく逸脱している。