文法的には破綻していると指摘されながらも、現代の職場では「とんでもございません」というフレーズが頻繁に交わされています。この状況を一変させたのが、公的機関による見解の提示でした。
文化庁が取りまとめた文化審議会答申『敬語の指針』(平成19年2月)において、この問題に対する公的な言及がなされています。同指針では、「相手からの褒め言葉に対して軽く打ち消す」文脈において、「とんでもございません」や「とんでもありません」という言い回しを使うことについて、「現在では広く使われており、許容される表現」として位置づけられました。つまり、社会的な慣用として定着した事実を国が公認した形です。
しかし、公的に容認されたからといって、ビジネスの現場で完全に摩擦が消え去ったわけではありません。文法的な厳密さを追求する場合と、現場での印象には依然として乖離が存在します。各表現の立ち位置を客観的に整理したのが以下の比較表です。
文法的な正しさを最優先するならば、名詞の「こと」を間に挟んだ「とんでもないことでございます」が最も安全かつ格調高い選択肢です。しかし、現代のスピード感が求められる商談で毎回この長大なフレーズを口にするのは、やや形式張った不自然さを醸し出します。言葉の「正しさ」と「現場での使いやすさ」のバランスを見極める感覚が求められます。