ソーシャルメディア上で唐突に投稿される「腹パン」という文字列に、当惑した経験を持つ一般ユーザーは少なくない。ネットスラングとしての腹パンの意味は、文字通り「腹部への強烈なパンチ(ボディブロー)」を短縮した俗語である。格闘技や不良漫画の文脈で古くから使われていた殴打の俗称が、Web空間のアンダーグラウンドなコミュニティへと持ち込まれ、独自の変異を遂げた結果として現在に至っている。
注目を集め続ける背景には、この言葉が単なる物理的暴力を指す枠組みを飛び越え、特定のシチュエーションを指し示す「概念」として記号化された点がある。日常会話ではまず耳にしない物騒な言葉でありながら、X(旧Twitter)や各種まとめサイト、二次創作イラスト投稿サイトでは、特定のキャラクターへの好意やツッコミの変形として頻繁に引用される二面性を持つ。
表層的なネットミームとして笑って済まされるケースがある一方で、言葉そのものが持つ暴力性の生々しさは消えていない。ネット用語としての腹パンが拡散した過程には、インターネット特有のブラックユーモアと、人間の根底にあるサディスティックな欲望が複雑に絡み合っている。