夏を全身全霊で謳歌するかまきりりゅうじですが、実は物語は夏だけでは終わりません。童話屋から刊行された続編の詩集には、季節が移ろい、風が冷たくなった頃のりゅうじを描いた「秋の詩」が収められています。
その代表作が、秋の訪れを告げる『あきのひ』や『おれはかまきり・その2』として知られる作品群です。夏の詩では「もえる くさの はらの どまんなかに たって」と猛々しく叫んでいたりゅうじが、秋になると草むらの片隅で、乾いた風に吹かれながら静かに自らのカマを見つめる姿が描かれます。
昆虫生態学の事実として、日本のカマキリの多くは成虫になって夏を駆け抜け、秋に産卵を終えると、冬を越すことなくその短い一生を終えます。かまきりりゅうじ自身も、どこかでその運命を悟っているかのように、秋の詩では急激にトーンを落とし、ちょっぴりセンチメンタルで物悲しい言葉を紡ぎます。
子どもの頃には「ただの面白い昆虫の詩」として笑っていた読者が、大人になり、人生の有限性や季節の儚さを知った上で読み返したとき、この「続きの詩」は胸に迫る切なさをもたらします。命のピークである夏の眩しさと、やがて訪れる静かな幕引き。この強烈なコントラストこそが、工藤直子氏の詩が単なる児童文学の枠を超えて、日本文学の傑作として読み継がれている決定的な理由です。