デッキシューズ(英語ではボートシューズ)とは、その名の通りヨットやボートの甲板(デッキ)で作業するために開発された専用靴を指します。水しぶきで濡れて激しく揺れる甲板上は、常に滑落の危険が伴う危険地帯。そうした過酷な環境で踏ん張りを効かせ、安全を確保する目的で作られたワークブーツの一種といえます。
最大の特徴は、波状の細かな切れ込みが入った特殊なアウトソールにあります。この溝が地面を踏みしめた際に開き、接地面と靴底の間の水分を効率よく押し出すことで、水に濡れた甲板でも強力なグリップ力を発揮します。このデッキシューズが滑らない仕組みを世界で初めて考案したのが、アメリカのアウトドア愛好家ポール・スペリー氏でした。凍結した雪道を滑らずに軽快に走り回る愛犬コッカー・スパニエルの足裏の溝に着想を得て、1935年に開発されたのが元祖デッキシューズであるスペリー トップサイダー(Sperry Top-Sider)です。
さらに、海水を浴びても硬化しにくいオイルドレザーのアッパーや、足の甲からかかと周りまでを1本の革紐でぐるりとホールドする「360度レーシングシステム」など、船上ならではの実用的なディテールが随所に散りばめられています。白や淡い色のソールが多く採用されているのも、甲板を靴底のゴムで黒く汚さないための配慮です。