裁判を通じて最も劇的な変貌を遂げたのは、被告ではなく主人公の里沙子でした。裁判が進む中で、里沙子は夫・陽一郎から「育児ノイローゼではないか」「精神科に行った方がいい」と診断書を突きつけられ、娘を連れて実家へ逃げ出そうとするなど、完全に精神を追い詰められます。
しかし、裁判員仲間である芳賀六実(ドラマ版:伊藤歩)らとの対話や、法廷で水穂の境遇を客観視し続けたことで、里沙子は決定的な真実に気付きます。自分を狂わせているのは自分の能力不足ではなく、「夫による巧妙な支配(ガスライティング)」と、幼少期から母に植え付けられてきた「良い子でいなければならない」という呪縛そのものだったという事実です。
ドラマ版のクライマックスでは、里沙子は自分をコントロールしようとする夫・陽一郎に対して真っ向から向き合います。「私は文香を愛している。そして、あなたがいなくても一人で育てていける」と言い放ち、これまで言われるがままだった従属関係を完全に断ち切るラストシーンは、観る者に強烈な鳥肌とカタルシスを与えました。