『サザエさん』の歴史において、マスオさんの声はこれまで3人の名優によって紡がれてきました。初代の近石真介さんは都会的でスマートなサラリーマン像を確立し、2代目の増岡弘さんは温厚さとコミカルな愛嬌を前面に出して国民的キャラクターへと昇華させました。
そして2019年8月、増岡さんの高齢による勇退に伴い、バトンは田中秀幸さんへと託されました。『名探偵コナン』の工藤優作や『ONE PIECE』のドフラミンゴなどで知られる実力派の就任時は大きな注目を集めましたが、驚き方のニュアンスにも確かな変化が見られます。
増岡さんのマスオさんが「パニックに近いハイトーンの絶叫」だったのに対し、田中さんのマスオさんは「知性と落ち着きを保ちながらも漏れ出る動揺」を表現する大人のアプローチが特徴です。交代当初こそ「叫び声が少し上品になった」といった視聴者の声もありましたが、現在では磯野家を穏やかに支える良き夫としてのリアリティが見事に定着しています。