本作を単なる「昭和の懐かしドラマ」と括ってしまうのは早計だ。表面上は恋愛ドラマの形をとりながらも、本質において描かれているのは人間のエゴや嫉妬、孤独が渦巻く深遠な愛憎劇であるからだ。人を愛する愛おしさと恐ろしさ、偽りの平穏が崩れ去る瞬間の緊張感が、過度なメロドラマに流れることなく静かに提示される。
この先駆的なアプローチは、その後の日本のテレビドラマの演出論を劇的に進化させた。現在放送されているサスペンスフルな愛憎ドラマや不倫をモチーフにしたヒット作の多くも、本作が切り開いた「平穏な日常のすぐ隣に潜む歪み」というテーマの延長線上に位置している。人間の普遍的な感情を真っ向から描き切ったからこそ、時代を超えて色褪せない強度を保ち続けているのだ。