高級木彫り熊ブームがメディアで取り上げられるにつれ、「実家の熊も100万円で売れるのではないか」という誤解が広がっています。しかし、冷静な事実確認が必要です。
最大の盲点は、昭和期に北海道全域で作られた木彫り熊の99%以上は美術的価値のない量産品であるという厳然たる確率の壁です。旭川や白老、阿寒湖周辺のアイヌ工芸作家による彫刻熊の中にも優れた銘品(鈴木吉五郎作品など)は存在しますが、それでも八雲の三大巨匠クラスに匹敵する相場を形成しているものは極めて一握りです。
また、ネット上では「鮭をくわえている熊はすべて偽物」という言説も見られますが、これも正確ではありません。初期の八雲作品や阿寒の名工の手による鮭喰い熊には、美術品として高値がつくものが実在します。「何をくわえているか」ではなく、「誰が、どのような美意識と刃跡で彫り上げたか」が価値の本質です。